2022/11/4  NHKのJAPAN PRIZE 2022、第49回 日本賞授賞式 一般向け部門最優秀賞(東京都知事賞)を受賞いたしました!

貧困、麻薬、IRAと戦うために古代ギリシャの哲学者の知恵を取り入れ

傷ついたコミュニティの心に希望を取り戻そうとするひとりの校長がいる

2022/11/4 
NHKのJAPAN PRIZE 2022、第49回 日本賞授賞式 一般向け部門最優秀賞(東京都知事賞)を受賞いたしました!

2022/10/30 
映画『ヤング プラトン』がNHKのJAPAN PRIZE 2022にノミネートされました!


これは北アイランド紛争後のベルファスト、アードイン地区に在る小学校を舞台にした観察ドキュメンタリー。ヨーロッパ連合からイギリス連邦が離脱し、その波にのみ込まれた北アイルランド。その首都ベルファスト市の北部に位置する、疎外された労働者階級のコミュニティは、何世代にもわたって貧困、ドラッグ、銃に悩まされてきた。

校長のケヴィン・マッカーヴィーと、献身的な教員チームが、クリティカル・シンキング(批判的思考)と心のケアの大切さを説き、子供たちに自分たちの境界や限界を超える知恵と力を「哲学」を通して教えようとしている。時には親や仲間、そして社会経済に決めつけられる人生を、「哲学」を学ぶことにより、戦争や暴力の神話に疑問を投げかけ、人生は挑戦し続けることができると希望を与えている。

これは北アイランド紛争後のベルファスト、アードイン地区に在る小学校を舞台にした観察ドキュメンタリー。ヨーロッパ連合からイギリス連邦が離脱し、その波にのみ込まれた北アイルランド。その首都ベルファスト市の北部に位置する、疎外された労働者階級のコミュニティは、何世代にもわたって貧困、ドラッグ、銃に悩まされてきた。

校長のケヴィン・マッカーヴィーと、献身的な教員チームが、クリティカル・シンキング(批判的思考)と心のケアの大切さを説き、子供たちに自分たちの境界や限界を超える知恵と力を「哲学」を通して教えようとしている。時には親や仲間、そして社会経済に決めつけられる人生を、「哲学」を学ぶことにより、戦争や暴力の神話に疑問を投げかけ、人生は挑戦し続けることができると希望を与えている。

密集する労働者階級の住宅の中には、北アイルランドの宗派闘争の傷跡が残っている。学校を囲む高い壁には鉄条網が張られ、壁には政治的な落書きや壁画が描かれている− ここはベルファストの北、アードイン地区の中心地。

ホーリークロスボーイズスクールは、4歳から11歳までの男子が通う学校(カトリック系)で、2001年には姉妹校のホーリークロスガールズスクールの子どもたちが地元のロイヤリスト(プロテスタント系住民)に通学路で脅迫された事件が、世界中のメディアで報道され、同時にホーリークロスボーイズスクールの教師も殺害予告を受けることとなった。

この地域の社会モデルは混沌とした衰退した地区であり、アイルランド共和派とイギリス連邦主義者の政治的対立により、地域の発展が遅れている。犯罪や薬物乱用が盛んなこの街の絶望感は、ヨーロッパで最も高い 青年や少年の自殺率に反映されている。

一見絶望的な状況の中で物語に変化を与え、ホーリークロスボーイズスクールの子供たちや、より広い地域社会が希望と目的を見出す手助けをしているひとりの校長がいる。想像を絶する取り組みの答えは、ソクラテス、プラトン、アリストテレスなどの哲学的な教えの中に在るのだった。

校長のケヴィン・マッカーヴィーは、空手の黒帯を持つ50歳の強面はげ頭だ。エルヴィス・プレスリーやローマ法王の写真などの不釣り合いなものが飾られている彼のオフィスは、彼の複雑な性格を表しているようだ。大胆不敵で、地域社会に影響を与えることに熱心なケヴィンは、アードインでは大きな存在だ。生徒たちの親も麻薬の売人も、IRAの反体制派も北アイルランド警察も、みんな彼のオフィスを訪れたことがあるだろう。ナイフによる攻撃やテロの脅威から生き延びたケヴィンは「いじめに屈しないこと、さもなければ、彼らは何度もやってくる」と、何事にも正面から取り組む。

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ケヴィンの原動力は、彼自身の過去にある。彼は、自分と親しい人々を自らの拳で守りながら育った。強い男であることは、労働者階級のベルファストで生き残るための一つの方法だ。数年後、彼はそれをうまく隠しつつも、激動の過去の恥と自責の念を抱きながら毎日を過ごしている。その過去が、彼の哲学への熱意の原動力となっている。

彼の探求は、生徒たちに抵抗力を身につけさせ、人生において何が起きても対処できるよう、感情をコントロールできるようにすること。哲学を道具に、過去、現在の生活、未来のあり方について、子どもたちに挑戦的な議論をさせ、どんなに些細なことでも質問するように促す。相手がたとえ親であってもすべてを疑問に思うように勧め、少年たちの暴力に正面から取り組む。学校中で起こるあらゆる喧嘩や口論は、ケヴィンのオフィスの外にある哲学ボードに書き出されることになる。「暴力は暴力を生み、決して止まらない」とケヴィンは主張する。

副校長のジャン・マリー・リールも、ケヴィンの大らかな性格にぴったりの人物だ。彼女は学校の中心人物であり、献身的な教師陣とともに学校をより良い未来へと優しくもしっかりと導く、頼れる母親的存在。宗派間の対立、長年にわたって蓄積された敗北主義的な時代精神、深刻な行動問題を抱えた子供たちなど、圧倒的な困難に直面しながらも、勝利と絶望をジェットコースターのように駆け抜けていくスタッフたち。ある日、8歳の子供が「自殺する」と脅したかと思うと、次の日には敷地内でパイプ爆弾が発見され、さらには致命的なウイルスがやってくる…。どんなに聡明な教師でも対応には限界があるが、そんな時、どこからともなく魔法が起きる。問題を抱えた子供が突然、進むべき道を見つけるのだ。

ケヴィンは誇らしげに宣言するだろう−「クリティカル・シンキング(批判的思考)が大事なんだ。少年たちは正しい選択をすることを学んでいるのだ」と。ケヴィンは、生徒たちが家庭で親に哲学的思考を教えるように仕向け、学校という壁を越えてその教えを広めようとしている。もとは反体制派のプロパガンダだった壁画から、ロダンの「考える人」に扮するホーリークロスの生徒の絵へと生まれ変わった近所の壁画の横を車で通り過ぎたケヴィンは、ひとり微笑みながら、エルヴィスの「If I Can Dream」のボリュームを上げるのだった。

映画『ヤング プラトン』(YaungPlato)が受賞した映画賞の一覧

受賞映画祭
一般向け部門最優秀賞(東京都知事賞)日本賞 2022 (NHK)
Virgin Media Dublin International Film Festival 2022ICCL Human Rights on Film Award
IFTA Irish Film & Television Academy Awards 2022Best Feature Documentary
Thessaloniki DFF 2022Special Jury Award
One World IFF 2022Regional Jury Award
Greenwich International Film Festival 2022Honorable Mention Documentary
Millennium Docs Against Gravity 2022Zwierciadło Award Best Film on Psychology
Millennium Docs Against Gravity 2022Lower Silesia Grand Prix Award
DocEdge 2022Through the Generations Award
Encounters IDF 2022Special Mention

監督
ナーサ ニ キアナン
NEASA NÍ CHIANÁIN

アイルランドで最も有名なドキュメンタリー作家の一人。ダブリンの国立芸術デザイン大学で学び、フリーランスのアートディレクターとしてアイルランドの長編映画やテレビのプロジェクトに携わった後、2001年にドキュメンタリーに転向した。これまでに9本のドキュメンタリー映画(内4本は長編作品)、1本のテレビシリーズを監督している。

監督
デクラン マッグラ
DECLAN MCGRATH

『Lomax in Éirinn』(2018年、TG4)の制作と監督を担当。2018年7月、Galway Film Fleadhで初公開され、アイルランド映画協会で”Ireland on Screen”シリーズの一部として上映された。デクランはBBCNIのシリーズ『Seinn Liom』(2014年)と『Cad É An Scéal』(2013年)の監督も務めている。25年以上にわたる彼の編集者人生の中で、数々の賞を受賞したドラマやドキュメンタリーを撮影してきた実績がある。

監督
デクラン マッグラ
DECLAN MCGRATH

『Lomax in Éirinn』(2018年、TG4)の制作と監督を担当。2018年7月、Galway Film Fleadhで初公開され、アイルランド映画協会で”Ireland on Screen”シリーズの一部として上映された。デクランはBBCNIのシリーズ『Seinn Liom』(2014年)と『Cad É An Scéal』(2013年)の監督も務めている。25年以上にわたる彼の編集者人生の中で、数々の賞を受賞したドラマやドキュメンタリーを撮影してきた実績がある。

Directors: Neasa Ní Chianáin & Declan McGrath

Producer: David Rane

Co-Producers:  Hanne Phlypo, Céline Nusse, Jackie Doyle, Declan McGrath

Editor: Philippe Ravoet

Cinematography: Neasa Ní Chianáin

Composer: David Poltrock

Story Consultant: Etienne Essery

Sound Designer/Editor: Reto Stamm

Sound Mixer: Frédéric Hamelin

Post-Production Supervisor: Mark Carroll

配給:doodler

日本配給より作品の紹介 doodler (ドゥードラー) 代表·石橋秀彦

日本配給より作品の紹介
doodler (ドゥードラー) 代表
石橋秀彦

  私は1985年から1997年に北アイルランドに在住し、現地の高校とベルファストの美術大学を卒業しています。1999年に日本に戻り、2008年には、渋谷のユーロスペースにて、北アイルランド映画祭を主催しました。今回ご紹介する映画「YOUNG PLATO」は、2020年にベルリン映画祭に行き、本格的に映画配給業務についた今年公開された「Hey! Teachers!」に続く第2作目となります。

  北アイルランドは、長期にわたり民族·領土「紛争」を続けてきた、現在英国の一部であり、イギリスのヨーロッパ離脱と、EUに所属するアイルランドと言う地形に挟まれた、大変ユニークな国です。その首都が、最近ケネス·ブラナー監督により注目された映画のタイトルでもある「ベルファスト」であり、今回の映画YOUNG PLATOも、その街の男子小学校の人々が主人公になる観察ドキュメンタリー作品です。

 私が北アイルランドに渡った1985年当時は、警察車両は装甲車であり、街中では軍人がパトロールを続けているような状況でした。毎日のように起こる爆弾事件や、テロリストによる襲撃などが続いていた時代です。しかし一方で、人々は優しく、逞しく、私にとっては大切な時間を過ごした、日本と同じ母国です。

 1990年代後半の和平交渉により、町から軍人は消えて、現在はおしゃれなカフェがあるような街に変わっています。しかし、地域的な分断問題は続いており、近年においても時折北アイルランドから暴力的な事件のニュースが続いています。

 そのような中で、奮闘するカトリク系の男子小学校の校長先生は、少年時代からの暴力に対する姿勢を、哲学を学ぶことで、各々の自分自身が考え、人を傷つけることをやめようと問い続けています。

 北アイルランド人の人間的なタフさを、独特なユーモアを持って作り上げた、ドキュメンタリー映画です。現在、ウクライナでの戦争が続く中、地域の兄弟として暮らしていかなくてはいけない人々の、紛争に対するその解決法を提案している作品だと思い、この度日本での公開を目指すことになりました。

 何卒よろしくお願いいたします。

doodler 代表·石橋秀彦